今の活動について(毎日新聞掲載記事 ’11)

先日、テキサス州ダラスで行われたスーパーボウルをカウボーイズスタジアムで観戦しました。試合終了直後、両チームの歓喜と残念が交わる中、それとは違う理由で涙を流している自分がいました。これまで毎年、スーパーボウルが終わる瞬間は「来年こそは!」と、チームが優勝し、私自身がチアリーダーとして来シーズンのスーパーボウルのフィールドに立てることに思いをはせ、3月に行われるオーディションに向けて本格的な準備を開始していました。けれども、もう今年はそれがない、来シーズン、私にはチームとともにスーパーボウルの地に立つ事を望む事もできない「引退」という事実が心に強いパンチを与えました。自分でも意外だった涙ですが、人生の半分をチアリーディングというスポーツとともに歩んできたからこそ、ダラスでNFL2010シーズンの最後の瞬間に立ち会い、私自身で自分の心に幕が引けた事を感謝しました。

今年を振り返ると、チームキャプテンを務めた事が一番大きな出来事でした。バッカニアーズチアリーダーズは30人のチームで4人のチームキャプテンがいます。キャプテンに初めて立候補し、企画書の提出、プレゼン、面談という選考を経て、4人のキャプテンの一人に選ばれたのです。日本人の私が、アメリカ文化の象徴の一つであるNFLチアリーダーのキャプテンに。私の名前がチームキャプテンとして発表された時には興奮よりも安堵の気持ちが強く、徐々に興奮と喜びが押し寄せてきました。雲の上の存在だと思っていたNFLチアリーダーのキャプテンに自分がなれた達成感を感じ、03年に最初にオーディションに合格して以来、初めて素直に自分を褒めることができました。そこからジェットコースターの様な一年がスタートしました。もっとも苦労した点はやはり言葉の問題です。言語という点からだけではなく、文化、習慣などの違いも大きかったと思います。外国人という言い訳を捨て、アメリカ風のコミュニケーション能力が強く求められた一年でした。アメリカでの生活では、日本とは違い、自分の意見をしっかり、はっきりと伝えることが必要で、これまでそれに努めてきたので、私にはアメリカ英語の湾曲表現がそれほど出来る訳ではありません。しかし、この湾曲表現ができるかできないかで、聞き手の印象はかなり変わります。この点では、チームメイトへのアドバイスについてかなり苦労しました。アメリカは褒める文化だと言われますが、ただ褒めるだけでなく、どういう点をどのように褒めるかが大切です。できていないところも指摘しなければいけません。例えば「ここできてないから頑張って」ではなく、できていない点を直接指摘せずに、相手にそれを気づかせ、自主的に克服させようとする言い方が求められる時もあるのです。頭では分かっていても、それを瞬時にいろんなシーンや違う人に対して言葉がすらすらと出てくる訳ではなかったのです。この一年は失敗し、そこから学ぶ事の繰り返しの一年でした。リーダーシップとコミュニケーション能力を磨くためにトーストマスターズに通うなど、私自身が努力した事はもちろんですが、コーチをはじめ、チームメイトが温かく見守ってくれた事にも感謝しています。

練習、相談、笑いや涙、数えきれないほどの時間をチームメイトと過ごして迎えたキャプテンとして初めての試合。頼る側から頼られる側へ。大きな達成感がありました。瞬く間に過ぎたシーズン、最後のゲームにはチームからサプライズがありました。ハーフタイムショーを踊り終えた後、チームメイトが予定にない動きをするのでビックリしていると、引退する私たちへのチームメイトとチームからのメッセージがスタジアムのスクリーンに映し出されました。そして、気づいたときには目の前に、お世話になったホストファミリーが花束を持って立っていました。感動と感謝の気持ちで涙が止まりませんでした。よく花形と言われるチアリーダーですが、私たちは試合の主役ではなく脇役です。それにもかかわらず、プレーオフ進出がかかった大切な試合中にこのようにチアリーダーの引退を取り上げてもらう事は、初めてではないでしょうか。私は、こんなに温かいチーム、コーチ、チームメイトに出会えて最高に幸せでした。

不器用で猪突猛進型の私はいろんな壁に派手にぶつかりながらNFLチアという夢と共に生きてきました。人間はこんなに涙がでるのかと驚いたほど悔し涙を流し、自信を崩されてはそれを立て直す事の繰り返しだったと思います。

もう二度と着る事のできないバッカニアーズチアリーダーの衣装を明日、晴れ晴れとした思いで返えしてきます。

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